校訂:林川 崇
解説:上田泰史
菊倍判/52頁
グレード:初〜中級
ISBN 978-4-7609-0650-5
2018年4月に発刊した書籍「パリのサロンと音楽家たち」。そこに登場する作曲家の中より10人を選び、難易度が低く、しかし魅力ある小品を厳選したピアノ曲集です。
H. エルツ:『 初心者のための24のとてもやさしい練習曲』より
第11番狩り
第13番セレナード(リンク先より視聴できます
『小さな手のための24のやさしい練習曲』より第4番鐘
S. ヘラー:『若者に捧げるアルバム』より第5番舟唄、第25番空気の精第3番
H. ラヴィーナ:『あやし言葉−−子どものメロディ』
J. マルタン:『天使たちの子守歌』
J. ヅィメルマン:『ピアニスト兼作曲家の百科事典』よりノクターン
F. カルクブレンナー:『溜息——2つのロマンス』より第1番エオリアン・ハープのため息——ロマンツェ
C. V. アルカン:『12か月—12の性格的小品』より第4番過ぎ越しの祭、第11番死にゆく人
A. コンツキ:『1つのポロネーズと6つのマズルカ』より第3番第1マズルカ
『2つのマズルカ』より第1番第1マズルカ
G. ロッシーニ(リスト編曲):『音楽の夜会』より第6番アルプスの羊飼いの女——チロレーゼ
F. ショパン:ノクターン第2番(カロル・ミクリによって伝承されたショパンの装飾付き)
全15曲。
<まえがき>
ようこそ、パリの社交界へ!
この曲集は、書籍『パリのサロンと音楽家たち19世紀の社交界への誘い』(上田泰史著、カワイ出版、2018年)に登場する10名の作曲家の15曲を収録しています。もちろん、まだ読まれていない方もおられることと思います。それに、目次を見てみると、作曲家も見たことないの名前が多いみたい……。でも、ご安心ください。この序文と解説で、この企画の趣旨と、作曲家たちの特徴やプロフィールをしっかり説明していますので、当時のピアノ音楽について、手軽に知ることができます。
書籍では、1830年頃から1845年頃のパリに焦点をあて、文化人たちが集った格式あるパリのサロンの様子を描き出しています。主役はもちろん音楽と音楽家。当時、サロンは楽壇への登竜門でした。19世紀、パリの名手や外国から来た音楽家たちは、一流の文化人たちが集うサロンでデビューの機会をつかみ、音楽界へと羽ばたいていきました。往時のサロンのセンスや雰囲気を感じられるような楽譜を作ることを願って、この曲集が生まれました。
本曲集に収録されている音楽家は、生涯の大半をパリで過ごしたフランスの音楽家と、外国人音楽家に大別されます。まず、外国人音楽家にはショパン(1831年パリ着)、リスト(1823年パリ着)、ヘラー(1838年パリ着)、コンツキ(1837年までにパリでデビュー)がいます。彼らは、名声を夢見てピアノ文化が花開いた1820年代から1830年代にかけて、パリにやってきました。他方、パリのピアノ音楽家たちは、ヅィメルマン、カルクブレンナー(両者とも両親はドイツからの移民)、エルツ(オーストリア出身)、アルカン、ラヴィーナ、マルタンです。これらの音楽家は、ほとんどがパリ音楽院でピアノ教育を受けました(女性のマルタンのみ例外的に、ヅィメルマンの個人的な弟子)。
編集にあたり、カワイ出版編集部の意向を汲み、収録曲はいずれも初級を中心に選曲しています。当時のサロンでは技巧的な曲が数多く披露され、名手たちが演奏と作曲の技を競いました。しかし、今回はそうした名手たちについても、易しめの曲を通して、より多くの方々に当時のピアノ曲の魅力に触れて頂きたいと考え、作曲家・ピアニストの林川崇氏と編集にあたりました。
同じ街に身を置いた音楽家たちの個性とともに、共通する時代の空気を感じて頂ければ幸いです。
上田泰史
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