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池辺晋一郎:「男声合唱のためのエチュード」

価格 : 税込1,540円(本体1,400円)
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作曲:池辺晋一郎
A4判/32頁
グレード:中〜上級
演奏時間:約12分30秒
ISBN 978-4-7609-1954-3


ピアノやヴァイオリン、声楽にもエチュードがあるのになぜ合唱にはエチュードがないのだろう? そんな発想から生まれた作品。 縦の線としての「5度」「2度」の音程のエチュード、横の線としての「休符」「長音」のエチュード、そして縦横の接点であるべき「滑舌」の5つのエチュードで構成されている。

1. 5度のエチュード    (3’00”)
2. 2度のエチュード    (1’50”)
3. 休符のエチュード    (2’30”)
4. 長音のエチュード    (3’00”)
5. 滑舌のエチュード    (2’10”)


 
<まえがき>

 男声合唱の魅力は格別だ。中学生のころ、親しい親戚の女性が都内の大学で合唱をしていて、コンサートをよく聴いた。彼女が歌っていたのは混声合唱だったが、同じコンサートに男声合唱のステージもあり、僕はそれにはまった。清水脩や多田武彦作品に、はまった。やがて僕自身も高校の部活で合唱をやることになるが、混声。しかし、練習の合間に仲間と遊び、酔いしれるのは男声合唱だった。

 長じて、歌うことはなくなり、作曲の側に住みついて、かつて予想もしなかったほど多くの合唱作品を書いてきた。だが、混声、女声に比して男声作品を書く機会は少ない。混声曲に後日男声版も作成、ということはままあるが、オリジナルの男声作品は、数曲である。ところが、実は書きたくてしかたがないのだ。

 そこに機会が巡ってきた。東京混声合唱団を通じてかねて親しくおつきあいさせていただいている田中信昭先生から「自分が指揮している法政大学アリオンコールに新作を」という依頼を頂戴したのである。しかし、テキストを選ぶのに苦労した。いろいろ迷ううち言葉ではなく男声の「響き」にこそ集中したいと考えるに至った。「エチュード」という地点にたどりついたのはそれゆえである。合唱指導の専門家ではない僕ゆえ、現場でのエチュードの必要性に迫られたから、というわけではない。

 従って、この作品において言葉は一義的なものではない。とはいえ「滑舌のエチュード」の試みなど「意味という付加価値を持たない言葉」ゆえの自由さを十二分に謳歌したかった。

機圍掬戮離┘船紂璽鼻 言葉は「ご」「ど」のみ。この2語とも母音は「O」なので、残りは「O」。ある著名指揮者が某名門オーケストラのリハーサルで、繰り返し5度音程を演奏させて響きを仕上げていくプロセスに出会い、肯んずるところ多く、この発想につながった。

供圍嘉戮離┘船紂璽鼻 言葉は「に」「ど」のみ。残りは「la」と「lu」。2度音程は、現代作品はもとより古典的な語法でも「非和声音」のテンション形成に関して重要である。

掘垉拮笋離┘船紂璽鼻 合唱では、ややもすると休符がおろそかになる。「楽譜と年金はキュウフが大事」というのは、たまたま僕が合唱指導などに携わるとよく言うジョーク。「Pa」「lu」「lo」「Wa「la」──スキャットのみによる一種のスケルツォ。

検堋慌擦離┘船紂璽鼻 管楽器などでも、長い音を安定して持続させる訓練は大切である。まして「声」においておや。オープン・ハミングと舌先の「t.t.t……」、そして「A」「U」「lu」。

后坡蠕紊離┘船紂璽鼻 「あかさたな はまやらわ いきしちに……」「いろはにほへと ちりぬるを わかよたれそ……」といった誰もが知る五十音羅列のあとに、これこそこの曲を書くにあたりもっともやってみたかった「乱数表による語群」がつづく。意味をまったく持たないことは言うまでもない。かなり発音しにくいところも出てくるが、それを克服してほしいのである。「不確定な高さ」という現代音楽的指定にも取り組んでほしい。ラストでは「鼻濁音」への挑戦を。
 
池辺晋一郎

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