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伊東一郎:プロコフィエフ歌曲選集

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作曲:S.プロコフィエフ
校訂・監修:伊東一郎
対訳・解説:服部麻実
A4判/160頁
グレード:中〜上級
ISBN 978-4-7609-4170-4


本邦初のプロコフィエフ歌曲選集。モスクワ音楽院にてロシア歌曲を主に声楽の研鑽を積んだ服部麻実氏の対訳・解説、ロシア文学・音楽の我が国第一人者、伊東一郎氏による校訂・監修を付した。また、巻末に訳者の恩師モスクワ音楽院ガリーナ・ピサレンコ教授による演奏法のアドヴァイスも掲載。ロシア歌曲唱法に大いに役立つ仕上がりとなっている。
ロシア語になじみの薄い演奏者への一助として、ロシア語歌詞の下にカタカナによる発音を付した。全26曲。


2つの詩 Op.9
1. 他の遊星では(K.バーリモント 詩)
2. 小舟が岸を離れ(A.アプーフチン 詩)

3. みにくいあひるの子(アンデルセンの童話より) Op.18

アンナ・アフマートワによる5つの詩 Op.27
4. 太陽の光が部屋に満ち
5. 本当の優しさ
6. 太陽の思い出
7. こんにちは
8. 灰色の目の王

歌詞のない5つの歌 Op.35
9.
10.
11.
12.
13.

14. お菓子の歌(N.サコンスカヤ 詩)(「3つの子どもの歌 Op.68より」)

ロシア民謡編曲集 Op.104
15. 夏のカリーナ
16. 緑の小さな森
17. 山の上のカリーナ
18. カテリーナ
19. 白い小雪
20. サーシェニカ
21. 彼はどこにもいない
22. 小さな森のむこうに
23. 夢
24. 茶色の瞳
25. ドゥーニュシカ
26. 修道僧


 
<まえがき>

 セルゲイ・プロコフィエフ(1891-1953)はピアニストであり、また作曲家として20世紀前半のソビエト時代の中で主導的な立場の一人であった。その時代、国際的には第1次世界大戦、国内的には1917年にロシア革命が起き、彼は不安定な情勢から国を離れる決心をし、日本を経由してアメリカに渡った。その後1920年からパリに拠点を移し、旧知のディアギレフやストラヴィンスキー等と再会し本格的に活動を始めたが、1925年以降から帰国を考え、1936年にスターリン政権下のソ連に定住した。その後1948年にはソビエト共産党中央委員会のジダーノフによって形式主義者と批判を受け、名誉を回復しないまま1953年にこの世を去った。奇しくもその日はスターリンが他界した日と同じ日であった。だが彼の死から10年が経過した1963年頃からソビエト政権に於いてその作品に対する研究、再評価が始まり、没後50年にあたる2003年には彼の作品による音楽フェスティバルがモスクワ音楽院で開催された。
 彼は生涯に習作や未完の作品を除き7つの交響曲、5つのピアノ協奏曲、9つのピアノソナタの他、歌劇、バレエ音楽、映画音楽また室内楽、合唱曲、声楽曲と様々なジャンルの音楽を作曲した。現在では彼の作品は世界中の音楽家によって演奏され、多くの人々を魅了しており、重要なレパートリーの一つになっている。
 日本では現在、彼の交響曲、ピアノ曲が中心に演奏されている。プロコフィエフの声楽作品はロシア語のため、まだ多くは演奏されるに至っていない。だが近年、グリンカ、チャイコフスキー等のロシアの作曲家の歌曲集の編集が日本で行われるようになり、作品が着実に演奏者のレパートリーに加えられるようになってきた。
 プロコフィエフは自身の音楽の特徴について、古典的なこと、革新的なこと、動的なこと、叙情的なことの4つをあげているそしてこれらの相反する要素が作品に同時に存在し、それらが絡み合って更なるエネルギーを与えていると言える。即ち斬新なハーモニーと力強く鋭い野性的なリズムは、20世紀という時代のエネルギーの奔流と躍動感、そして内なる激しい情熱を感じさせる。一方で叙情性については彼自身の言によれば、声楽作品の中に豊かに表現されている。その叙情性は彼独自のものであり、単に優美なだけではなく時には甘美さや透明感、ユーモアも包含している。それはチャイコフスキーやラフマニノフのような、ロシアの大地を感じさせるダイナミックな旋律から生れる叙情性とは異なり、プロコフィエフに於いては繊細で色彩的な表現である。また彼は優れたピアニストとしての資質に恵まれ、幼少の頃からピアノに慣れ親しみ、何よりも自らの理念をピアノで表現することができた。そのため歌曲に於いても、ピアノパートに多くの内面的な感情表現を演奏者に求めている。
 今回「演奏の手引き」に助言を頂いたガリーナ・ピサレンコ教授は、ロシア人民芸術家の肩書きを持つモスクワ音楽院の教授である。1974年に初めて来日し東京でリサイタルを開いた。1977年にはモスクワ・オペラと共に再来日しチャイコフスキーの「エヴゲニ・オネーギン」のタチアーナ役と「イオランタ」の主役を演じた。教授はかつてスタニスラフスキー・ネミロヴィチ=ダンチェンコ記念モスクワ・アカデミー音楽劇場の花形歌手であり、又オペラだけではなく室内声楽曲の歌手として、ロシア・ソビエトの歌曲を始め古典から現代に至る各国の多彩な作品をレパートリーとしている。
 教授はプロコフィエフ作曲のオペラに於いては「修道院の結婚」のリーザ役、「マッダレーナ」の主役、「戦争と平和」のハイライト、「賭博者」のテレビ映像用録音、歌曲では「みにくいあひるの子」、「A.アフマートワによる5つの詩」、またロシアでも稀にしか演奏されることのない「K.バーリモントによる5つの詩」などの演奏経験を豊富に持っている。特に「みにくいあひるの子」と「A.アフマートワによる5つの詩」の解釈、演奏は特筆すべきものがある。また教授はモスクワ音楽院の学生時代に晩年のプロコフィエフと同時代に生きたニーナ・ドルリアク教授(ピアニストS.リヒテルの夫人でモスクワ音楽院声楽科教授)から、それらの演奏についての伝統、解釈、表現を学び、それを確実に次の世代の演奏家達に伝えている。
 私はモスクワ音楽院在学中、教授のもとでプロコフィエフの声楽作品を数多く勉強した。教授は詩の内容を深く掘り下げ、的確に、また時代背景もふまえ懇切に指導された。そのことは私がプロコフィエフの作品をより深く理解する上で大きな力となった。
 
服部麻実

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